緒乃文子の

其れはやはりライチだと よっつ、なのね、と 畳と接しない貴方の脚の指 御口に頬張 るちょーーだい?ひそやかにひそやかに貴方を潰しては (貴方がそう為てゐたやうに) 違う名前を誂えて よぶ 蹴り飛ばして揺らすあーほら なんじかんも為て、ライチ落ちた …

夜の木漏れ日

尻切れトンボの青空を 妨げさえする雨なのだった 冬の匂いはなじみが深い あめつちが逆転するような日差しと 泡立つ皮膚を逆撫でる雨と ゆらゆら消える虹なのだった紫煙によって黄色に染まった真白い壁は 素晴らしい速度で近づくかにみせ 恐ろしい早さで遠ざ…

飴玉満月

そばだてる耳を無視しても出来上がるのは鉱石の、緩やかな答えを導き出しては結局これはあるべき段階だったと 赦す過程になってやっと、出来上がる飴玉色の想い出は 赦されるはずもなく一生象って形跡もなくお前以外のあの子と共有しながら生きていくのだこ…

夕方の空に茜と闇の合間に緑を見極めようと眼をこらしていたあの頃 橙が紫色を彷彿させるようにバイオレットが赤を彷彿させるように 五感に忠実に忠実にそれはもう犬のように

しんなりするのはやがてのことで もしどうしようもなくなれば どうしようもないという言葉を忘れさえすればいいと知っているよ女子高生だったとしても かつてそうであったように憎悪をくれと懇願してもすっかり幸せに慣らされて かつてそうであったように随…

ラブ/クローン

少しばかりの室温の上昇をも、ユリは嫌うのだった。だから僕らはいつだって冷静でいることを強いられるのだった。激怒も昂揚も昂奮も。室温を上昇させるとしてユリはそれを嫌うのだった。ここは恋愛病サナトリウムとは違うのだよ、ユリ。いつだったかそう言…

20世紀末で足踏み

崩れる音に耳を立てるなんて前時代的でなんて素敵! あたしは「せめて!」と思い立ち、ショートケーキを八つ裂きにした。 これ!この空気感☆ この実態しかない空洞こそが、千九百九十年代の最期の象徴であった。集大成なんかじゃない。「結果」という概念す…

恋人の恋人は恋人

どうしようもないことが続いてるときはどうしようもないことというのが続くもので、その結果として母の予知夢にうなされる。さて着床は先回りして防いだ。身体が熱をため込んで、明日吐くかも知れないというのはその通りだ。申し訳ないが緊急避妊。誰に対し…